お役立ち情報 11 Jan 2019

事務所やオフィスの原状回復で気を付けるポイントとは?


これまで住んでいたアパートを退去した際に、部屋を元の状態にするための原状回復費用が高すぎて、家主から敷金が戻ってこなかったという経験をした人もいるのではないでしょうか。借主が納得できるケースなら問題ありませんが、責を負う範囲や金額をめぐるトラブルは後を絶たず、そのため国土交通省は原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの改定を繰り返して紛争低減を図っています。しかしこのガイドラインは賃貸アパートなど個人レベルの話であり、賃貸オフィスや賃貸事務所については原則として対象外です。これを知らないままオフィス移転をすると移転予算計画が台無しとなり、ビジネスにも影響することがあるため貸借契約担当の方は細心の注意が必要です。

国交省ガイドラインのチェックと判断が重要

国土交通省のガイドラインでは、一般的な賃貸アパートなど個人レベルの場合は借主が意図的に室内などを汚損したり過失で破損したり、通常の使用レベルを超えて損耗した場合は賃借人に借りた時の状態に戻す原状回復義務があるとしています。しかしそれ以外の経年劣化や常識的な損耗の修繕費用は賃料に含まれていると定義しています。このガイドラインに準拠して処理すれば、個人の場合は賃借人の責任による部分の補修費などを差し引いて、預けていた敷金や補償金は借主に返却されます。
しかし企業が賃貸オフィスを退去する場合は、このガイドラインは原則として適用されません。大企業であれば総務や経理系の専門社員がいるので、ガイドラインの規定にも熟知しており大きなトラブルも少ないでしょう。しかし創業間もない企業やオフィス移転が初めての企業などの場合はこの事実を知らないばかりに転居時の予算計画が台無しとなり、移転後のビジネスにも影響を及ぼすこともあるので十分理解しておく必要があります。
事業用物件の場合は賃借している企業が借りた時の状態に戻すことであると解釈されており、いろいろな判例を踏襲し実社会で定着しています。個人と異なりビジネス上の建物の貸借契約では賃借した会社側が退去する際に借りた時の状態にする義務があることを担当者は理解しておく必要があります。ただしSOHO物件やマンションの一室をオフィスとして使用するといった小規模企業の場合はガイドラインの指針が適用される判例もあります。事務所の退去をめぐって原状回復に関する調査や検討の担当者となった方は、ガイドラインの対象外なのかどうかという点を十分チェックし、判断する必要があります。

入居時の条件や特約事項は必ず確認

企業の賃貸オフィスは原状回復に関する国交省ガイドラインの対象外ですが、移転時に貸主と借主の間で何らかの合意がなさ、差し引いた敷金が余った場合は退去する企業に返還されることもあります。しかし個人の場合ではすぐに返還されるのに対して、企業の場合では実際に返却されるまで時間がかかるのが一般的です。これは個人住宅に比べてオフィスは面積が広く設備も多種多様なので、貸主が退去時には気付かなかった大きな破損などが確認された場合の保険的意味合いがあります。一般的に3カ月以内の返還が妥当な線ですが、半年先になるケースもあり企業規模によっては資金繰りに苦しむ懸念もあります。時期の明示がない場合には、いつ返還されるのか分からないこともあります。オフィス入居時の契約担当者は、敷金の返還時期に関して厳密な表記がなされているかどうかを確認することも重要な業務になります。
このようにビジネスオフィスの移転に関わる権利と義務に関しては、入居時にかわす賃貸借契約書に記載されている内容のとおりです。担当セクションや担当責任者は重箱の隅をつつくぐらいの気構えで確認することが不可欠です。特に、原状回復に関する部分は重要です。中には、借主の責任の範疇にはないはずの通常損耗の修繕費用まで負担とする特約事項が盛り込まれていることがあるからです。国のガイドラインは特約が成立する要件について、特約の必要があること、暴利的ではないことなど、合理的理由があり、賃借人が本来の義務を超えた修繕を行うことを認識していることなどを列記しています。しかし裁判になった場合は判断が分かれることもあります。もし賃借側が敗訴した場合は想定外の支出を強いられることもあり、その後のビジネス上も資金面で苦しい立場に立たされることも懸念されます。入居時の契約担当責任者の方は契約書の内容を完全に把握しておくことと、退去時は契約書に記載がない要求については法的、論理的に拒否できるだけのことを学んでおくことが大切です。

移転トラブル回避と経費節減を実現する居抜きという選択

オフィス移転はたとえトラブルがなくても一定の経費を必要としますし、もしトラブルが発生した際は解決まで時間がかかり、余計な費用がかさむことがあります。従来は、そして今でも新しい事務所に移転する際は、内装に手を入れたり備品を新調したりすることが当たり前でした。しかしここ最近はビジネスライクな考え方が浸透してきて、退去時には原状回復関係の工事をせず、入居する側もそのことを承知の上で入るという入居、退去システムが注目され始めています。これを居抜き方式といいます。
バーや小さな飲食店などは営業形態が類似しているので昔から居抜きはありました。店舗名だけ変えて、カウンターや什器類はそのままという方式です。しかし事務所移転の場合は業種や業態が異なる企業が出入りすることは普通であるため、退去する際は借主側が契約書の内容に基づいて入居前の状態に戻す義務を果たすのが常識でした。しかし高度経済成長時代は終わり、いかに資金運用を高度化するかが問われる時代となり、退去する側も入居する側も費用を節減できる居抜きという方法を取る企業が増えています。これからの企業移転では、一つの有力な選択肢になる可能性があります。
原状回復の必要がない居抜き物件の場合、その最大のメリットは経費が大幅に圧縮できることです。退去する側は最低限度の補修費で済み、入居する側もそのことを前提としたローコストの初期費用で新しいオフィスに入居することが可能です。例えばオフィスの造作(会議室など)であれば、退去側は撤去費用がいりませんし、入居側はそのまますぐに使えるので費用の面だけでなく利便性もあります。従来のような撤去、新設といった工事が不要となるので、ビジネスで最も重要な時間を節減できます。最近は、従来のような原状回復条件に縛られない居抜き物件を専門的に扱い、居抜きでの退去を希望する企業と居抜きでの入居を希望する企業とのマッチングを行う専門企業もありますので、必要に応じてコンタクトする方法も有用です。

まとめ

オフィス移転は企業にとって重要な意思決定です。退去時には人事異動などで担当者が交代しているケースもありますが、企業として社会ルールを順守する一方で不当な不利益を被らないようにすることが大切です。また最近注目されている居抜きでの入居という選択肢も検討して、今後のビジネスを展開する上で一番メリットがある形での移転計画を立てるといった柔軟な発想も必要です。

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