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本社移転を徹底解説!計画から手続きまでの全手順と成功のポイント
2025.09.10

企業の成長や経営戦略の変化に伴い、「本社移転」は多くの企業にとって重要な経営判断の一つとなっています。特に近年、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションの進展により、オフィスのあり方は大きく見直されています。しかし、本社移転は単なる引っ越しではなく、多岐にわたる準備や法的手続きを伴う大規模なプロジェクトです。 本記事では、本社移転を検討している経営者や総務担当者の方に向けて、最新の動向から具体的な手順、法的手続き、成功のポイントまでを網羅的に解説します。この記事を読めば、本社移転プロジェクトの全体像を把握し、戦略的な移転を実現するための一歩を踏み出せるはずです。
目次
最新データで見る本社移転の動向
近年、企業の本社移転にはどのような傾向があるのでしょうか。公表されている調査データを基に、最新の動向を解説します。
首都圏からの「転出超過」が続く背景
帝国データバンクの調査によると、2024年に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ本社を移転した企業は363社となり、過去最多を記録しました。一方で、地方から首都圏への移転は296社にとどまり、4年連続で首都圏からの「転出超過」となっています。
この背景には、リモートワークの定着が大きく影響しています。オフィスに出社しなくても事業を継続できる環境が整ったことで、企業は都心に本社を構える必要性を問い直し始めました。高いオフィス賃料などのコストを削減し、経営資源を事業成長に集中させる動きが活発化しているのです。また、災害リスクの分散を目的としたBCP(事業継続計画)の観点から、地方へ機能を移す企業も増えています。
項目 | 2024年 首都圏本社移転 | 備考 |
首都圏からの転出 | 363社 | 過去最多を更新 |
首都圏への転入 | 296社 | 前年より減少 |
差し引き | 67社の転出超過 | 4年連続の転出超過 |
【参考】帝国データバンク「首都圏『本社移転』動向調査(2024年)」
移転先のトレンドは地方都市へ
かつては首都圏への一極集中が続いていましたが、現在は地方都市への移転がトレンドになっています。東京商工リサーチの調査では、2024年度に他都道府県へ本社を移転した企業のうち、地区別で転入超過数が最も多かったのは九州(+148社)、次いで中部(+147社)でした。
特に九州では、半導体関連産業の集積などを背景に製造業や情報通信業の転入が目立ちます。県別で見ると、埼玉県(+250社)が転入超過のトップとなっており、都心へのアクセスも維持しつつコストを抑えられる近郊エリアも依然として人気が高いことがうかがえます。 これらのデータから、企業がコスト、人材、事業環境などを総合的に判断し、最適な移転先を多様な選択肢の中から見出そうとしている動きが見て取れます。
【参考】2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
本社移転がもたらす戦略的メリット
本社移転は、コスト削減だけでなく、企業成長を加速させる多くの戦略的メリットをもたらします。ここでは主な4つのメリットを紹介します。
オフィスコストと固定費の削減
最も直接的なメリットは、コスト削減です。特に都市部から地方へ移転する場合、オフィスの賃料を大幅に削減できる可能性があります。地方は都市部に比べて賃料相場が安いため、同じ床面積でも固定費の圧縮が可能です。削減できたコストは、研究開発や人材育成、マーケティングといった成長分野へ再投資できるようになり、企業の競争力強化につながります。
優秀な人材の確保と働き方の改善
移転は、人材戦略においても有効な一手となり得ます。Uターン・Iターン希望者など、地方での就業を希望する優秀な人材にアプローチできる機会が生まれます。また、自然豊かな環境や、都心の喧騒から離れたオフィスは、従業員のストレスを軽減し、ワークライフバランスの向上に貢献します。働きやすい環境は、従業員の満足度や生産性を高め、結果として離職率の低下と人材の定着にもつながるでしょう。
企業ブランドイメージの再構築
本社移転は、企業のブランドイメージを刷新する絶好の機会です。例えば、地方へ移転し、地域経済の活性化や雇用創出に貢献することで、「地域貢献企業」としてのポジティブなイメージを構築できます。また、環境に配慮したサステナブルなオフィスビルへの移転は、企業の社会的責任(CSR)への取り組みを社外にアピールする強力なメッセージとなります。
BCP(事業継続計画)対策の強化
近年、自然災害やパンデミックなど、事業継続を脅かすリスクは多様化しています。本社機能を首都圏などの一箇所に集中させている場合、その地域が被災すると事業全体が停止してしまう可能性があります。本社機能の一部または全部を地方に分散させることで、有事の際にも事業を継続できる体制を構築できます。これは、企業の存続に関わる重要なリスクマネジメントです。
移転前に知るべきデメリットと対策
多くのメリットがある一方、本社移転には慎重に検討すべきデメリットも存在します。事前に対策を講じることで、リスクを最小限に抑えましょう。
取引先との物理的な距離への対策
特に主要な取引先が都市部に集中している場合、地方への移転は営業活動に影響を与える可能性があります。対面での打ち合わせが難しくなる、移動コストが増加するといった課題が考えられます。この対策としては、営業拠点のみを都市部に残す、オンライン会議システムを積極的に活用する、定期的な訪問計画を立てる、といった方法が有効です。
移転先での人材確保の難しさへの対策
地方によっては、特定の専門スキルを持つ人材の確保が都市部より難しい場合があります。移転を決定する前に、移転先候補地の労働市場を十分に調査することが重要です。大学や専門学校と連携して新卒採用を行ったり、移住を伴う従業員への手厚いサポート(住宅手当、引っ越し費用補助など)を提供したりすることで、人材確保のハードルを下げることができます。
従業員の通勤とコミュニケーションへの配慮
本社移転は、従業員の生活に大きな影響を与えます。通勤時間が長くなる、転居が必要になるなどの負担を強いる場合、優秀な人材の流出につながりかねません。移転計画の初期段階から従業員への十分な説明とヒアリングを行い、理解を得ることが不可欠です。また、本社と支社、あるいはリモートワーカーとの間でコミュニケーションが希薄にならないよう、ITツールを活用した情報共有の仕組みを強化することも重要です。
【完全ロードマップ】本社移転の全手順
本社移転を成功させるには、計画的かつ段階的にプロジェクトを進めることが重要です。ここでは、計画立案から移転完了までの5つのステップを解説します。
手順1:移転目的の明確化と計画立案
まず、「なぜ本社を移転するのか」という目的を明確にすることが重要です。コスト削減、人材確保、事業拡大など、目的によって最適な移転先やオフィスのあり方は異なります。目的が定まったら、移転の時期、予算、スケジュール、プロジェクトメンバーなどを具体的に定めた計画を策定します。この段階で経営層から現場までが共通の認識を持つことが、プロジェクトを円滑に進める鍵です。
手順2:移転先の選定と現オフィスの解約予告
策定した計画に基づき、移転先となる物件の選定を開始します。立地、面積、賃料、周辺環境、交通の便などを多角的に比較検討し、目的に合致した物件を探します。同時に、現在のオフィスの賃貸借契約書を確認し、解約予告の期限を把握しておくことが重要です。一般的には契約終了の6ヶ月前が解約予告の期限とされていることが多いため、スケジュールに余裕を持って進めましょう。
手順3:新オフィスの設計と業者選定
移転先が決まったら、新しいオフィスのレイアウトや内装を設計します。従業員が働きやすく、コミュニケーションが活性化するような空間を目指しましょう。オフィスデザインや内装工事、引っ越しなどを依頼する専門業者を選定し、具体的な要件を伝えて見積もりを取得します。複数の業者を比較検討し、実績や提案内容、コストパフォーマンスに優れたパートナーを選びましょう。
手順4:インフラ整備と各種契約
新しいオフィスで業務を開始するためには、さまざまなインフラ整備が必要です。電気、ガス、水道といったライフラインの契約に加え、インターネット回線や電話、複合機などの通信環境を整えます。セキュリティシステムの導入や、オフィス家具、OA機器の発注もこの段階で行います。移転後すぐに業務を再開できるよう、各業者とのスケジュール調整を密に行うことが大切です。
手順5:移転作業の実施と旧オフィスの原状回復
いよいよ移転作業です。従業員への周知を徹底し、荷造りや部署ごとの移転スケジュールを管理します。移転当日は、トラブルに備えてプロジェクトメンバーが現場に常駐し、指示を出せる体制を整えておくと安心です。新オフィスへの移転が完了したら、旧オフィスの原状回復工事を行います。契約内容に基づき、借りた時の状態に戻して貸主に引き渡します。
またオフィスやビルオーナーの条件によっては居抜き退去が出来る場合、原状回復のコストを抑えられますので気になる方は居抜き退去時に原状回復は必要?退去時の流れと注意点を解説をご覧ください。
失敗しないための法的手続きと届出リスト
本社移転(特に本店所在地を変更する場合)には、会社法で定められた登記申請をはじめ、さまざまな行政手続きが必要です。手続きの漏れは過料の対象となる可能性もあるため、確実に行いましょう。
法務局への本店移転登記申請
本店所在地を変更した場合、変更日から2週間以内に、移転先の所在地を管轄する法務局へ「本店移転登記申請」を行う必要があります。これは会社法第976条で定められた義務であり、怠ると代表者個人が100万円以下の過料に処せられる可能性があります。申請には、株主総会議事録や取締役会議事録などが必要です。
税務署・自治体への法人異動届
登記申請と並行して、税務関係の届出も必要です。移転前の管轄税務署と移転後の管轄税務署の両方に「異動届出書」を提出します。同様に、都道府県税事務所や市町村役場にも、法人の異動に関する届出が必要です。提出期限は各自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
労働保険・社会保険の住所変更手続き
従業員を雇用している場合、労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)の住所変更手続きも必須です。労働基準監督署、公共職業安定所(ハローワーク)、年金事務所へ、それぞれ所定の書類を提出します。
その他関係各所への届出
以下の機関にも、住所変更の届出が必要になる場合があります。自社が該当するかどうかを確認し、手続きを進めましょう。
届出先 | 主な手続き内容 |
消防署 | 防火対象物使用開始届出(内装工事を行う場合など) |
警察署 | 営業許可証の住所変更(特定の許認可事業を行っている場合) |
金融機関 | 法人口座の住所変更 |
郵便局 | 転居届の提出 |
【内部リンク】事務所移転の完全ガイド|流れ・必要な手続き・注意点 | 居抜き物件ならつながるオフィス
本社移転で活用できる補助金・税制優遇
国や地方自治体は、企業の地方移転を促進するためにさまざまな支援策を用意しています。これらを活用することで、移転にかかるコストを大幅に軽減できる可能性があります。
国が主導する「地方拠点強化税制」
これは、東京23区からの本社機能の移転や、地方における本社機能の拡充を行う企業に対して、税制上の優遇措置を適用する制度です。具体的には、オフィス建設や改修にかかる費用の税額控除(オフィス減税)や、移転先で新たに従業員を雇用した場合の税額控除(雇用促進税制)などがあります。適用には一定の要件があるため、内閣府地方創生推進事務局のウェブサイトなどで詳細を確認することをおすすめします。
各自治体が提供する独自の支援制度
引用:地方創生2.0
多くの都道府県や市町村が、企業誘致のために独自の補助金や助成金制度を設けています。例えば、オフィス賃料の一部を補助する制度、新規雇用者数に応じて奨励金を交付する制度、固定資産税を減免する制度など、その内容は多岐にわたります。移転先の候補地が決まったら、その自治体のウェブサイトを確認したり、商工担当部署に問い合わせたりしてみましょう。制度には期限がある為注意が必要です。
もし、再開発やカジノなどの新設で外国人の来日が増加するとされている大阪に本社を移転。
または大阪支店を立ち上げる場合は上記の制度を利用しつつ、オフィス移転の初期費用を抑えたいオフィス移転のご担当者様や社長は、内装付きオフィスや居抜きオフィスをご検討ください。
※上記制度が大阪で利用できるかの問い合わせは各自でお願いいたします。。
本社移転の成功事例から学ぶ
最後に、本社移転を成功させた企業の事例を参考に、自社の移転計画に活かせるヒントを探してみましょう。
株式会社パソナグループ
パソナグループは2020年9月より、東京で行ってきた人事・財務経理・経営企画などの本社機能を兵庫県淡路島に段階的に移転することを発表しました。同社は2023年度末までに約1200名の社員が淡路島で活躍する計画を掲げ、真に豊かな生き方・働き方の実現とBCP対策の一環として移転を実施しています。移転により地方環境を活かした雇用創出にもつながり、地方移転のモデルケースとなりました。
【参考】https://www.pasonagroup.co.jp/news/index112.html?itemid=3593&dispmid=798
株式会社ルピシア
世界のお茶専門店ルピシアは2020年7月、本社を東京都渋谷区代官山町から北海道虻田郡ニセコ町字元町に移転すると発表しました。移転後は新本店所在地を「北海道ニセコ本社」、東京の事業拠点を「東京本社」として運営する体制を構築しています。もともとニセコには同社の食品工場があり、地域との深いつながりを基盤とした移転が実現されました。
【参考】https://www.lupicia.com/shop/pages/info20200714.aspx
まとめ
本社移転は、企業にとって大きな転機となる重要な経営戦略です。コスト削減や人材確保、ブランドイメージ向上など多くのメリットが期待できる一方で、計画的な準備と法的手続きを確実に行う必要があります。
最新の動向や他社の事例も参考にしながら、自社にとって移転がどのような価値をもたらすのかを深く検討し、全社一丸となってプロジェクトを進めることが成功の鍵となります。この記事が、皆様の戦略的な本社移転の実現に向けた一助となれば幸いです。
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