会社の住所変更手続きを徹底解説!必要な届け出や書類を一覧で紹介
2025.10.15


会社のオフィス移転に伴い、本店の住所を変更する際には、法務局での登記変更をはじめ、税務署や年金事務所など、さまざまな行政機関への届け出が必要です。手続きには期限が定められているものも多く、対応が漏れると過料(罰金)が科される可能性もあります。 この記事では、会社の住所変更(本店移転)に必要な手続きの全体像から、各ステップごとの具体的な手順、必要書類、費用、注意点までを網羅的に解説します。 担当者の方がスムーズに手続きを進められるよう、分かりやすくまとめました。
目次
会社の住所変更で必要な手続きの全体像
会社の住所変更、いわゆる「本店移転」の手続きは、大きく分けて法務局への登記申請と、その後の行政機関への届け出の2段階で構成されています。まずは、手続きの全体像と流れを把握することが重要です。
尚、会社の住所変更手続きは、オフィス移転の前後で計画的に進める必要があります。特に法務局への登記申請は、本店移転日から2週間以内という期限があるため注意が必要です。
タイミング | 主な手続き |
移転前 |
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移転後2週間以内 |
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登記完了後、速やかに |
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その他 |
|
会社の移転登記のスケジュールが心配な方は、オフィスの移転時もオフィス移転のスケジュールの目安は?ポイントやおすすめの時期も紹介!! もご覧ください。
新オフィスの住所移転先は同じ県か県外か?
本店移転の手続きは、移転先が現在の本店所在地と同じ法務局の管轄内か、管轄外かによって、手続き内容や登録免許税の額が異なります。 まずは自社の移転がどちらに該当するのかを、法務局のウェブサイトなどで確認しましょう。
項目 | 管轄内移転 | 管轄外移転 |
具体例 | 東京都渋谷区 → 東京都渋谷区 | 東京都渋谷区 → 神奈川県横浜市 |
登記申請先 | 旧本店所在地の法務局(1ヶ所) | 旧本店所在地の法務局に
新旧2ヶ所分をまとめて申請 |
登録免許税 | 30,000円 | 60,000円 |
県外への移転はなぜ2つの登記が必要なのか?
会社の登記は、戸籍のようなものです。法務局は、その「戸籍」を管理する役所だと考えてみてください。
渋谷 → 渋谷(管轄内移転)の場合渋谷区内で引っ越すだけなので、担当の法務局は変わりません。 渋谷の法務局に「区内で住所が変わりました」と変更届を1つ出すだけで完了です。 そのため、手数料は1箇所分の30,000円となります。
【参考】国税庁:本店または支店の移転の登記_1箇所につき3万円
一方、上記の表にある例で渋谷から神奈川になると、それぞれの法務局の管轄が異なりますので、以下の2段階の手続きが必要になるのです。
- 古い法務局での手続き(渋谷) 「この会社は神奈川へ出ていきました」という移転の登記をします。(手数料30,000円)
- 新しい法務局での手続き(神奈川) 「渋谷からこの会社がやってきました」という設立に近い登記をします。(手数料30,000円)
この2つの手続きは、実際には書類を旧本店所在地の法務局にまとめて提出するだけで済みますが、法務局内部では2箇所で作業が行われるため、手数料も2箇所分の合計60,000円が必要になります。
【参考】株式会社の本店移転の登記をしたい方(オンライン申請):法務局
本社の住所移転の手続き手順と注意点
ここからは本社の住所移転時の手順と注意点を解説します。適切に対応しないと業務に支障が出るだけでなく、過料を支払うことになりますのでご確認ください。
尚、大まかな流れは以下の通りです。
・STEP1:法務局での本店移転登記申請
・STEP2:税務署・都道府県税事務所への届け出
・STEP3:社会保険・労働保険に関する手続き
・STEP4:その他、住所変更後に忘れずに行うべきこと
・ 会社の住所変更手続きに関する注意点
それぞれ解説します。
STEP1:法務局での本店移転登記申請
本店を移転したら、まず法務局で本店移転の登記申請を行います。これは、会社の公式な情報を最新の状態に保つための重要な手続きです。
定款の変更が必要なケースを確認する
定款には本店所在地が記載されています。もし定款の記載が「東京都渋谷区」のように市区町村までで、移転先も同じ渋谷区内であれば、定款の変更は不要です。 しかし、番地まで記載している場合や、他の市区町村へ移転する(管轄外移転)場合は、定款の変更が必要となります。
株主総会での特別決議を行う
定款の変更には、株主総会の「特別決議」が必要です。 これは、議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要な決議です。この決議を経て、具体的な移転先や移転日を取締役会などで決定します。
登記申請の期限は移転後2週間以内
会社法により、本店を移転した日から2週間以内に登記申請を行うことが義務付けられています。 この期限を過ぎてしまうと「登記懈怠(とうきけたい)」とみなされ、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があるため、絶対に遅れないようにしましょう。
本店移転登記の必要書類を準備する
登記申請には複数の書類が必要です。不備があると手続きが遅れる原因となるため、慎重に準備を進めましょう。主な必要書類は以下の通りです。
書類名 | 備考 |
本店移転登記申請書 | 法務局のウェブサイトで様式をダウンロードできる。 |
株主総会議事録 | 定款変更が必要な場合に添付する。 |
株主リスト | 株主総会議事録を添付する場合に必要。 |
取締役会議事録または取締役決定書 | 本店の具体的な移転場所や移転日を決定した際の議事録。 |
印鑑届書 | 管轄外移転の場合に必要。 |
委任状 | 司法書士などの代理人に依頼する場合に必要。 |
登録免許税(費用)を納付する
登記申請には登録免許税がかかります。上記で解説した通り移転の種類によって税額が異なり、収入印紙で納付します。
- 管轄内移転の場合:30,000円
- 管轄外移転の場合:60,000円 (旧本店と新本店の各法務局に30,000円ずつ)
STEP2:税務署・都道府県税事務所への届け出
法務局での登記が完了したら、次は税金に関する手続きです。移転後の会社の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得してから進めるとスムーズです。
税務署へ異動届出書などを提出する
本店移転前の所在地を管轄する税務署へ、「異動届出書」を提出します。 従業員を雇用している場合は、移転から1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」も必要です。 これらの手続きは、移転後速やかに行いましょう。
【参考】A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
都道府県税事務所・市町村役場へ届け出る
法人住民税や法人事業税に関する手続きのため、都道府県税事務所や市町村役場にも届け出が必要です。 提出書類の名称や様式は自治体によって異なるため、事前に各自治体のウェブサイトで確認してください。一般的に、登記事項証明書のコピーの添付が求められます。
STEP3:社会保険・労働保険に関する手続き
従業員を雇用している場合、社会保険と労働保険の住所変更手続きも必須です。こちらも期限が短く設定されているため、迅速な対応が求められます。
年金事務所へ事業所名称・所在地変更届を提出する
社会保険の手続きとして、移転から5日以内に管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出します。 移転によって管轄が変わる場合は、移転前の年金事務所へ届け出ます。
【参考】適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き|日本年金機構
労働基準監督署へ労働保険の変更届を提出する
労働保険に関して、移転日の翌日から10日以内に、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署へ「労働保険名称・所在地等変更届」を提出します。
【参考】適用事業所に関するQ&A
ハローワークへ雇用保険の変更届を提出する
雇用保険の手続きは、移転後の管轄ハローワークで行います。期限は労働基準監督署と同じく移転日の翌日から10日以内です。 「雇用保険事業主事業所各種変更届」に加え、労働基準監督署で受け取った「労働保険名称・所在地等変更届」の控えや、登記事項証明書のコピーが必要になります。
【参考】ハローワークインターネットサービス – 利用上の注意
STEP4:その他、住所変更後に忘れずに行うべきこと
行政機関への手続き以外にも、対応すべきことがいくつかあります。事業運営に支障が出ないよう、漏れなく行いましょう。
金融機関の口座情報を変更する
法人口座を開設している全ての金融機関で、住所変更の手続きが必要です。 手続きには、登記事項証明書の原本や届出印、来店者の本人確認書類などが求められるのが一般的です。
郵便局へ転居届を提出する
旧住所宛ての郵便物を新住所へ1年間無料で転送してもらうため、郵便局へ転居届を提出しましょう。 インターネット(e転居)でも手続きが可能です。
【参考】転居・転送サービス – 日本郵便
許認可に関する変更手続きを行う
建設業や古物商など、事業に必要な許認可を得ている場合は、その許認可を管轄する行政庁への住所変更の届け出も必要です。 手続きを怠ると、許認可が無効になる可能性もあるため、必ず確認しましょう。
ウェブサイトや名刺の情報を更新する
会社のウェブサイトに記載されている本店所在地や、従業員の名刺、会社案内パンフレットなどの情報も忘れずに更新しましょう。取引先への信頼を維持するためにも重要な対応です。
会社の住所変更手続きに関する注意点
最後に、住所変更手続き全体を通して注意すべき点をまとめます。スムーズな手続きのために、ぜひ押さえておいてください。
期限を過ぎると過料が発生する可能性がある
繰り返しになりますが、本店移転登記は移転日から2週間以内、社会保険や労働保険の手続きもそれぞれ5日、10日以内と期限が定められています。 期限を過ぎると、会社の代表者に対して過料が科されるリスクがあるため、スケジュール管理を徹底しましょう。
オンラインでの申請も可能
法務局への登記申請は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用してオンラインで行うことも可能です。 法務局へ出向く時間がない場合に便利な方法です。
【参考】登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと
専門家への相談も検討する
住所変更手続きは多岐にわたり、非常に煩雑です。もし自社での対応に不安がある場合や、本業が忙しく時間を確保できない場合は、司法書士などの専門家に代行を依頼することも有効な選択肢です。 費用はかかりますが、ミスのない正確な手続きが期待できます。
まとめ
会社の住所変更は、単なる引越し作業ではなく、法律で定められた多くの手続きを正確に行う必要があります。
まずは「管轄内」か「管轄外」かを確認し、法務局への登記申請を2週間以内に行うことが最優先です。その後、税務、社会保険、労働保険に関する届け出を、それぞれの期限内に完了させましょう。本記事が、皆様の円滑な手続きの一助となれば幸いです。
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