事務所移転で慌てないための消防法を解説!設置基準などのポイントも紹介
2025.12.19


オフィスの開設や移転、レイアウト変更を計画する際、デザイン性や機能性だけでなく、従業員の安全を守るための法律「消防法」への対応が不可欠です。消防法への理解が不足していると、罰則の対象となるだけでなく、万が一の火災時に重大な事態を招く可能性があります。この記事では、事務所やオフィスに適用される消防法の基本から、具体的な義務、レイアウト変更時の注意点までを分かりやすく解説します。
目次
事務所に適用される消防法とは?
事務所における消防法は、火災の発生を予防し、万が一火災が発生した場合に被害を最小限に食い止めることを目的としています。従業員や来訪者が安全に避難できるよう、建物の構造や規模に応じてさまざまな義務が定められています。
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火災から従業員の命と財産を守る法律
消防法は、火災の予防、警戒、鎮圧を通じて、国民の生命、身体、財産を火災から保護することを目的とした法律です。事務所やオフィスも「防火対象物」として消防法の適用を受け、防火管理者を選任する必要があります。テナント(事業者)は、定められた基準に従って防火管理体制を整える義務があります。具体的には、消火器や火災報知器といった消防用設備の設置や、避難経路の確保などが求められます。
違反した場合の罰則
消防法に定められた義務を怠った場合、厳しい罰則が科される可能性があります。例えば、消防署からの措置命令に従わない場合や、必要な届出を怠った場合には、罰金や懲役刑が科されることがあります。法令違反は企業の信頼を損なうだけでなく、重大な経営リスクにつながるため、確実な対応が求められます。
以下を引用にする
| 違反内容の例 | 罰則の例 |
| 消防用設備の設置命令違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 防火管理者の選任命令違反 | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 防火管理者の選任・解任届出義務違反 | 30万円以下の罰金または拘留 |
| 消防用設備などの点検結果の虚偽報告 | 30万円以下の罰金または拘留 |
参照:(一財)日本消防設備安全センター 違反是正支援センター
事務所に課される消防法の4つの主な義務
事務所やオフィスには、主に4つの義務が消防法によって定められています。これらは安全なオフィス環境を維持するための根幹となる要素であり、それぞれの手続きを正しく理解し、実行する必要があります。
| 義務の種類 | 概要 | 関連する主な条件 |
| 消防用設備などの設置 | 消火器、自動火災報知設備、誘導灯などを設置・維持する | 建物の延べ面積、構造、収容人数による |
| 防火管理者の選任 | 防火管理の責任者を選任し、届け出る | 収容人数が50人以上 |
| 消防計画の作成 | 事業所の実態に応じた防火・避難計画を作成し、届け出る | 防火管理者の選任が必要な事業所 |
| 定期点検と報告 | 設置した消防用設備などを定期的に点検し、結果を報告する | 消防用設備などが設置されている全ての事業所 |
消防用設備などの設置義務
事務所の規模や収容人数、建物の構造に応じて、消防法で定められた消防用設備などを設置し、適切に維持管理する義務があります。これには、消火設備(消火器など)、警報設備(自動火災報知設備など)、避難設備(誘導灯など)が含まれます。どの設備が必要になるかは条件によって異なるため、専門家への確認が不可欠です。
防火管理者の選任と届出
一定規模以上の事務所では、防火管理者を専任し、所轄の消防署長へ届け出る必要があります。事務所は非特定防火対象物に分類され、収容人数(従業員と顧客の合計)が50人以上の場合に選任義務が発生します。防火管理者は、消防計画の作成や避難訓練の実施など、事業所における防火管理の中心的な役割を担います。
消防計画の作成と届出
防火管理者を選任した事業所は、その事務所の実態に合わせた消防計画を作成し、消防署へ届け出る義務があります。消防計画には、火災予防のための取り組み、火災発生時の消火・通報・避難の方法、避難訓練の実施計画などを具体的に記載します。この計画に基づき、日頃から防火管理を徹底することが重要です。
消防用設備などの点検と報告
設置した消防用設備などは、定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告する義務があります。点検には、6ヶ月に1回行う「機器点検」と、1年に1回行う「総合点検」の2種類があります。点検は消防設備士などの有資格者が行う必要があり、事務所の場合は3年に1回の報告が義務付けられています。
【設備別】事務所の消防用設備などの設置基準
事務所に設置が必要となる主な消防用設備と、その設置基準について解説します。ただし、これはあくまで一般的な基準であり、建物の構造や他のテナントの状況によって適用が異なる場合があるため、詳細は必ず所轄の消防署や専門業者にご確認ください。
| 設備の種類 | 主な設置基準(事務所の場合) | 備考 |
| 消火器 | 延べ面積300㎡以上 | 歩行距離20mごとに1本以上 |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積300㎡以上など | 建物の構造や階数により異なる |
| 誘導灯 | 不特定多数が利用する建物、地階・無窓階・11階以上など | 避難口や通路、階段に設置 |
| スプリンクラー設備 | 原則として11階以上 | ビルの構造や用途により異なる |
引用:東京消防庁:消防用設備等点検報告制度 (消防法第17条の3の3)
消火器の設置基準
消火器は、もっとも身近な初期消火設備です。事務所の場合、原則として延べ面積が300㎡以上のフロアに設置義務があります。ただし、内装が燃えにくい材料で作られている場合は、規制が緩和されることもあります。設置にあたっては、歩行距離20mごとに1本以上、そして誰でも使いやすいように床からの高さ1.5m以下の場所に設置する必要があります。
自動火災報知設備の設置基準
火災による煙や熱を自動で感知し、警報ベルなどで知らせる設備です。事務所の場合、延べ面積300㎡以上、または建物の地階や無窓階で延べ面積100㎡以上の場合などに設置が義務付けられます。テナントとして入居している場合でも、ビル全体の面積や構造によって設置が必要になるケースがあります。
誘導灯・避難誘導標識の設置基準
火災などの非常時に、避難口や避難経路を明示するための設備です。緑色の背景に人が走っているピクトグラムが目印です。不特定多数の人が利用する建物や、地階・無窓階・11階以上の階などに設置義務があり、避難口の上部や、廊下・階段などの避難経路上に、利用者が容易に識別できる場所に設置する必要があります。
スプリンクラー設備の設置基準
天井に設置され、火災の熱を感知して自動的に散水し消火する設備です。事務所ビルでは、原則として11階以上の階に設置が義務付けられています。ただし、建物の構造や他の用途との複合状況によっては、より低い階層でも設置が必要となる場合があります。
オフィスレイアウト変更時に注意すべき消防法のポイント
オフィスの使いやすさや生産性向上のためにレイアウトを変更する際にも、消防法への配慮が不可欠です。とくにパーティションの設置や通路幅の確保は、避難のしやすさに直結するため注意が必要です。
| レイアウト変更のポイント | 注意事項 | 関連法規など |
| 通路幅の確保 | 避難の妨げになる物を置かない。デスクなどがはみ出さないようにする。 | 建築基準法 |
| パーティションの設置 | 天井まで届くものは新たな消防設備が必要になる場合がある。 | 消防法 |
| 個室ブースの設置 | 製品によっては消防設備の設置義務が生じる。免除規定の確認が必要。 | 消防法 |
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避難経路となる通路幅を確保する
火災発生時に従業員が安全かつ迅速に避難できるよう、避難経路となる通路には十分な幅を確保しなければなりません。消防法自体に通路幅の明確な数値規定はありませんが、建築基準法では、片側にのみ居室がある通路は1.2m以上、両側に居室がある場合は1.6m以上の幅を確保することが定められています。通路に物を置いたり、デスクをはみ出して設置したりして、避難の妨げにならないよう注意が必要です。
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パーティションの設置ルールを守る
オフィスで多用されるパーティションも、設置方法によっては消防法に抵触する可能性があります。とくに、天井まで達する高さのあるパーティションを設置すると、その区画が「個室」と見なされ、新たな火災報知器やスプリンクラーヘッドの設置が必要になる場合があります。これを防ぐため、天井との間に隙間を設ける「欄間オープン」という手法がよく用いられます。
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個室ブースの設置に関する注意点
Web会議の普及に伴い、可動式の個室ブースを設置するオフィスが増えています。この個室ブースも一種の「個室」と見なされるため、消防用設備の設置対象となる可能性があります。ただし、「天井及び壁が不燃材料で作られている」「床面積が6㎡以下である」といった一定の要件を満たす製品は、規制の免除対象となる場合があります。導入前には製品の仕様をよく確認し、必要であれば消防署に相談しましょう。
事務所の消防法に関する手続きと届出の流れ
事務所の開設やレイアウト変更に伴い、消防法に関連するさまざまな届出が必要になります。手続きを怠ると法令違反となるため、計画段階から必要な書類を確認し、準備を進めましょう。
| 届出の種類 | 提出のタイミング | 主な内容 |
| 防火対象物工事等計画届出書 | 工事開始の7日前まで | 内装工事の計画 |
| 消防用設備等設置届出書 | 設置完了後4日以内 | 消防用設備などの設置・移設 |
| 防火管理者選任(解任)届出書 | 選任・解任後、遅滞なく | 防火管理者の変更 |
防火対象物工事等計画届出書
間仕切りの変更や壁紙の張り替えなど、オフィスの内装工事を行う際に必要な届出です。工事を始める7日前までに、工事内容を示す図面などを添付して、管轄の消防署に提出する必要があります。この届出により、消防署は工事内容が消防法に適合しているか事前に確認します。
消防用設備等設置届出書
消火器や自動火災報知設備などを新たに設置したり、移設したりした場合に必要な届出です。工事が完了してから4日以内に、消防用設備などの概要表や試験結果報告書を添付して提出します。消防署は、この届出を受けて検査を行い、法令に適合しているかを確認します。
参考:東京消防庁_消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書(法第17条の3の2)
防火管理者選任(解任)届出書
新たに防火管理者を選任した場合、または防火管理者が退職などで交代した場合に必要な届出です。遅滞なく、防火管理者の資格を証明する書類(防火管理講習の修了証など)のコピーを添付して提出します。
参考:東京消防庁_防火・防災管理者選任(解任)届出書 / 消防計画作成(変更)届出書
まとめ
本記事では、事務所やオフィスに適用される消防法の基本的な義務や、レイアウト変更時の注意点について解説しました。消防法は複雑で専門的な内容も多いですが、従業員の安全を守り、企業の社会的責任を果たす上で遵守が不可欠です。
オフィスの移転や改装を計画する際は、設計段階から消防法に詳しい専門家や内装業者に相談し、法令に適合した安全なオフィス環境を実現してください。
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