サステナビリティ
イノカ/ドラえもんも驚く!?ブルーエコノミーを推進する注目の「環境移送技術®」①海洋研究の新たなモデルを確立した“いきもの好き”ベンチャー企業
2025.11.27








『つながるオフィス』のコラムでは、より良い社会に向けた独自のサステナブル活動をされている企業さんをご紹介しています。 今回のお客様は、株式会社イノカさん。海を中心とした自然環境を水槽内に再現する独自技術「環境移送技術®」を提供し、企業・団体などの環境問題対策をサポートされている企業さんです。 “いきもの好き”が過ぎるメンバーの自然に関する深い知見、IoTを用いた高度な技術力を武器に、経済産業省のスタートアップ支援プログラム企業にも選定され、多くの企業・団体とともに精力的な活動を展開されています。 地球温暖化の及ぼす深刻な影響が次々と明らかになり、海と人との共存を目指すブルーエコノミーの概念も広がりつつある中、「環境移送技術®」は海洋研究のニュースタンダードとして存在感を増しています。注目されるイノカさんの活動について、同社取締役COO 竹内四季さんに教えていただきました。
自然環境をまるっと再現!「環境移送技術®」とは
―イノカさんのお仕事について、詳しく教えてください。難解そうな「環境移送技術®」ですが、ぜひ分かりやすくお願いします。
竹内さん:はい。僕たちは、海などの特定の自然環境を水槽の中に人工的に再現して、陸上でもその環境にアクセスできるようにする「環境移送技術®」を提供している会社です。
これを分かりやすく説明するときに便利なのが、ドラえもんのひみつ道具『切り取りナイフとフォーク』です。この道具は、山や海など自然環境の一部をナイフでサクッと切り取り、フォークでザクッと刺して丸ごと好きなところに運べてしまう、まさに「環境移送技術®」そのまんまのアイテムなんです。「ひみつ道具人気ランキング」では堂々の圏外なんですが(笑)、シンプルに理解しやすいのではないでしょうか。
残念ながらドラえもんの力は借りられないので、僕たちは自然環境やいきものの生態に関する知識と、研究者の知見を組み合わせ、水槽の中に自然環境を再現しています。
ご存じのように、いま地球上では温暖化の影響でさまざまな課題が表面化しており、地上だけでなく海の中で起きている変化も深刻です。例えばサンゴ礁は、この先20年以内にその約8割が死滅すると予測されていますが、海全体の約25%におよぶ生き物がサンゴ礁をインフラとして生活している中、サンゴ激減は死活問題。海の生物にとっての死活問題は、人類の生活にも大きな影を落とします。サンゴ礁だけでなく、藻場やマングローブ林の消失など、解決しなくてはならない課題が山積しています。
イノカでは、再現した自然環境をより深く精密に研究し、自然の抱える問題を可視化。課題の周知から解決へとつなげるアクションをさまざまな団体と共同で取り組んでいます。
自然を見つめ続けたエンジニアの“生きた知識”活用
―企業で自然環境を再現できるとはすごいですね。イノカさんならではの強みや特長は、どんなところにあるのでしょうか?
竹内さん:うちの最大の強みは、自然環境を人工的に構築するための知見を持ったプロフェッショナル、『生態圏エンジニア』が在籍いるところですね。
イノカは、もともと代表の高倉葉太が東大の修士課程修了後、アクアリウムの魅力を広めたい、それを社会に役立てたいという強い思いで立ち上げた会社です。立ち上げに際して、自宅などで魚を飼育しているアクアリスト、中でも飼育に関する独自の研究を重ね、研究者も驚くような飼育知識を持った人材を、生態圏エンジニアとして採用しています。日々の試行錯誤が育んだ豊富なデータや知識を共有して体系化、生きた知識として「環境移送技術®」に活用しているのが最大の特長だと思っています。
もちろん、その知識を支えるための技術力も強みです。自社開発したIoTデバイス「Moniqua」等を活用し、水質、水温、水流、土壌、照明環境、微生物を含む生物など、自然に近い環境にするための諸条件を細かく設計し、コントロールしています。また、再現後も継続した環境が保持されるよう常時パラメータを管理、提供した全水槽のメンテナンスも行っています。
イノカでは、とても繊細で環境変化に弱く、水族館や研究機関でも難しいとされるサンゴの飼育も安定的に行っており、2022年には世界初の真冬の水槽内におけるサンゴの人工産卵実験にも成功しているんですよ。


左写真:「環境移送技術®」により、サンゴ礁を人工的に再現した水槽
右写真:株式会社イノカ COO 竹内四季さん
水槽から広がるブルーエコノミー
―設立以降の推移や実績、またどのような企業や団体からどのような依頼があるのかお聞かせください。
竹内さん:「サンゴの魅力を広めたい、アクアリウムからイノベーションを起こしたい」という思いでスタートしましたが、事業として成立するまでには時間が掛かりました。会社設立の2019年度は、生物多様性といった領域はまだ社会的に主流化しておらず、収益化が難しい領域でした。
イノカの水槽は、企業のエントランスなどに導入いただくケースもありますが、環境改善や保全活動の研究用や、自社商材が海に与える影響を調べるためのモニタリングに活用いただくことが多いですね。
例えば、鉄鋼を生産する際に出る副産物「鉄鋼スラグ」の特性をサンゴの生育に利用するための研究や、東京湾で水質悪化の原因になっているヘドロ問題の解決方法の研究。また身近なところでは、日焼け止めに含まれる成分が海に及ぼす影響についてデータを取るなど、自治体や企業さんとさまざまな共同研究を行っています。
サステナビリティやカーボンニュートラルといった意識が浸透し、海洋問題、ブルーエコノミーへの理解も広がりはじめたことで、協業お問い合わせはここ2-3年で増えてきました。
天候に左右される自然環境と違い、安定した水槽内で海を見える化し、クリアなデータ取得が可能なイノカの「環境移送技術®」は、海洋研究のスタンダード、新たなものさしとしてのポテンシャルがあると考えています。。また、海だけでなく畑や田んぼといった自然環境の再現も着手しており、陸海問わず自然環境のさまざまな課題に向けて、水槽を通して積極的に取り組んでいきたいと思っています。
―竹内さん、ありがとうございました。
技術と知識で水槽の中に自然環境を再現する「環境移送技術®」。インタビューでお邪魔した文京区オフィス内の「イノカラボ」にも、サンゴ礁やマングローブ、サメなどが生息するたくさんの海が再現されており、地球環境研究の最前線にいるのだなと背筋が伸びるような思いを抱きました。
後半では、「環境移送技術®」を用いて、どんな企業さんがどんな研究を進めているのか、具体的な事例について伺っていきます。
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