サステナビリティ
クボタ/農家さん向け『J-クレジット』支援プロジェクトが加速中②「次世代農業につなげたい」熱い思いが生み出す“農業由来のクレジット”
2025.10.09








より良い社会に向けたさまざまなサステナブル活動をご紹介するこちらのコラム。前号に引き続き、農業機械をメインに幅広く農業に携わっている株式会社クボタさんです。 クボタさんでは、日本の農家さん向けに、CO₂など温室効果ガスの削減実績を収益化する支援サービスを展開。国の認証制度『J-クレジット』参加のすそ野を広げる活動をされています。 『J-クレジット』とは、個人や企業が実施した温室効果ガス削減実績を、『クレジット』と呼ばれる“価値”として認証する国の認証制度。クレジット創出者とクレジット需要者の間で売買が可能なため、2026年度に本格稼働する『排出量取引制度(GX-ETS)』を目前に、注目が集まっています。 前編では、主に『J-クレジット』概要や、クボタさんの展開する支援サービスの概要や活動の流れなどをご紹介しました。後編となる今号では、実際に農家さんがどのような削減活動をされているのか、その取り組み事例やメリット・デメリット、CO₂削減実績についてフォーカスしていきます。 インタビューにご協力いただくのは、『クボタ J-クレジット支援サービス 大地のいぶき』に立ち上げから尽力された同社アグリソリューション事業企画推進部 有賀 千香子さん、宮野 陽介さんです。
メタン発生を約3割抑制!
―『クボタ J-クレジット支援サービス 大地のいぶき』では、農家さんはどのような温室効果ガス削減対策をされるのでしょうか。
有賀さん:クレジット創出方法として、おもにコメ農家さん向けに『中干し期間延長』策をお願いしています。
稲作には、稲の生育中に数日間、水田から水を抜いて土壌を乾かす“中干し”という作業があるんですが、『中干し期間延長』とはその期間をさらに7日延長して中干しすることで、土壌に酸素が供給されてメタン発生を3割程度抑えることができるというものです。
温室効果ガス排出量の7割近くを占めるのはCO₂ですが、CO₂の約28倍もの温暖化効果を持つメタンも深刻な課題のひとつ。国内のメタン排出量のうち、稲作・水田由来の排出量が占める割合は約4割とも言われ、『中干し期間延長』は農水省も浸透に注力している削減策です。
クレジット創出量は大幅増加中
―『クボタ 大地のいぶき』の導入実績やCO₂削減実績について教えていただけますか?また、プロジェクトの手応えについてもお聞かせください。
宮野さん:2022年のプロジェクト立ち上げ以降、発行された『クボタ 大地のいぶき』由来のクレジット創出量は着実に増えています。
水田での『中干し期間延長』による初年度2023年度のクレジット創出量は、累計1,723トンCO₂分となりました。2024年度の活動では、前年比20倍を超える数百件の農家さんにご参加いただき、数万トンCO₂の創出見込みです。また今年度に関しても、現時点ですでに新規参加を決められた農家さんが倍増レベルで増えているので、2025年度クレジット創出量がさらに大きな数字になるのは間違いありません。
プロジェクトの参加実数は非公開ですが、北海道、東北、北陸のコメ農家さんを中心に多数ご参加されています。着手当初は馴染みのない『J-クレジット』という制度に、「大丈夫なのか」という声もありましたが、今ではだいぶ周知が進んできた印象です。
また、農家さん単独ではなく、市町村などの自治体が中心となって地域の農家を募り、『クボタ 大地のいぶき』に参加するケースも出てきて、プロジェクトの浸透ぶりを実感しています。
環境調和型農業が結ぶ地域振興
―市町村主導のプロジェクト参加というのも気になりますね。自治体主導による『大地のいぶき』参加事例について、詳しくお聞かせください。
有賀さん:一番乗りで参加されたのは、有機農業やスマート農業など環境調和型農業に積極的に取り組まれている福井県・越前市さんです。越前市さんは、『J-クレジット』制度を活用した温暖化対策にも意欲的で、クボタにお声がけいただいて実現となりました。
具体的には、市内の3つの農家さんが水田の中干し期間延長に取り組み、年間で約200トンのCO₂削減を実現するというもの。北陸新幹線の越前たけふ駅近郊の水田を活用するため、市のPRや商品付加価値向上にもつなげたいというご意向で、クボタはそのクレジット創出のサポートをさせていただきます。
また現在、他県からもお話しがあり、受託事業化が進んでいます。こちらはコメ農家さんではなく、ハウス農家さん向けの施策がメイン。ビニールハウスの空調を石油から電気に変える『ヒートポンプ空調』の導入を促進して、CO₂削減を実現する県主導の取り組みを支援していく予定です。
“地域活性化”は、農業を元気にするために欠かせないワードです。クボタとしては、自治体との連携には、今後さらに力を入れていきたいと思っています。
ご興味を持たれた自治体さんは、ぜひクボタまでご連絡ください。お待ちしています!
重要度増す温暖化効果ガス排出量取引
―2026年度の『排出量取引制度』本格稼働、さらに2030年度のカーボンニュートラル実現中間目標に向けて、さらに周知拡大が予測される『J-クレジット』制度ですが、『クボタ 大地のいぶき』、そしてクボタさんの今後についてお聞かせください。
有賀さん:クボタとしては、さらに多くの農家さんにご参加いただき、『クボタ 大地のいぶき』からクレジット創出の輪を拡大していく予定です。
同時にクレジット購入者に関しても、『クボタ 大地のいぶき』から生まれた“農業由来のクレジット”というブランド性・ストーリー性に共感し、またその思いを企業活動に役立てていただける販売先を見極めていきたいと思っています。「何でもいいのでクレジットが必要」ではなく、日本の農業を守る、未来のコメ作りを守る、そんな思いで購入いただける企業さんに向け、クレジットのPRにも力を入れていく予定です。
海外では、排出権取引はすでに活発化しています。環境配慮を重視する大企業では、カーボンオフセット企業でないと素材の調達先として選定されなくなるなど、ますます重要度が増してくると思います。
クボタでは、二国間でクレジット取引のできる制度である『JCM』制度についても参入し、日本だけでなく世界の農業から環境貢献にアプローチしつづけていきたいと思っています。


左から、同社アグリソリューション事業企画推進部 有賀千香子さん、宮野陽介さん、弊社SOI事業部 岡村
「クボタ J-クレジット支援サービス 大地のいぶき」はこちら
―有賀さん、宮野さん、貴重なお話しをありがとうございました。
お話しの中で、「日本の農業を守りたいというクレジット需要家さんに買ってほしい」という愛ある言葉が印象的でした。農家さんとともに手塩にかけて育て上げたクレジットは、その“想いを引き継いでくれる方”もキッチリ見極めたいですよね。
日本の農業を明るくする『クボタ 大地のいぶき』プロジェクトがさらに拡大し、“農業由来のクレジット”が様々なシーンで利用される未来を楽しみにしています。
本日は、お忙しい中ありがとうございました。
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