
サステナビリティ
ANAホールディングス/チャレンジ気質がはぐくむ未来への一歩『未来創造室』②世の中にない新しい紙製品「あっぷるん」とは?
2025.06.24
企業独自のサステナブルな活動をご紹介するこちらのコラム。前号に引き続き、ANAホールディングス株式会社の未来創造室 デジタル・デザイン・ラボに在籍する山地顕子さんにお話しを伺います。 社員立案による事業アイディアを形にしていく部署『未来創造室』。山地さんは、同部署でご自身が企画立案されたアップサイクル素材開発プロジェクトに日々取り組まれています。インタビュー後編となる今号では、2025年6月には、晴れて初のお披露目となる“プラスチックのような紙製品”「あっぷるん」、その開発エピソードをたっぷりとお聞かせいただきます。
まるでプラスチック?まったく新しい紙素材
―アップサイクル素材開発プロジェクト「あっぷるん」について、概要をおしえていただけますか?
山地さん:「あっぷるん」は、BECS株式会社さんとの共同開発で生まれた、“まるでプラスチックのように柔軟に成型できる紙素材”です。原料となるのは、毎月発行され廃棄されているANAの機内誌「翼の王国」。機内誌を粉砕して回収した植物繊維と可塑剤を、独自の配合技術でペレットに再生させます。このペレットは紙由来なのでもちろん石油由来の樹脂不使用ですが、汎用的なプラスチック成形機に投入すると内部でプラスチック原料と同じような変化をするため、プラスチック同様さまざまな形に成型させることができます。これがBECS株式会社さんの特許技術にあたります。
紙のペレットに熱と圧力をかけてプラスチックのように圧縮して成型するので、仕上がった製品の手触りはなめらかで、本当にプラスチックみたいですよ。使い終わったら、既存の古紙回収に出せば再生紙として再利用も理論上可能です。従来からあるリサイクルシステムに乗せるだけなので、リサイクル性もかなり優秀と言えると思います。使い捨てプラスチック製品の代替素材として、プラ削減への大きな可能性になるのではと思っています。

左写真:左写真:未来創造室 デジタル・デザイン・ラボに在籍している山地さん、
右写真:アップサイクル素材開発プロジェクト「あっぷるん」のペレットと、「あっぷるん」からできたブロック
まさにゼロからのチャレンジ!
―サンプルを触ってみましたが、本当になめらかで驚きますね。どういった経緯で、この企画を思いつかれたのでしょうか。
山地さん:私はもともとCAなのですが、客室乗務員7年目を迎え、この先の自分のキャリアについて揺れていました。そんな時にコロナが来て、飛行機に乗るお客様が日に日に減っていき、とうとう自宅待機という事態になってしまった。どうしようもない不安の中で、気持ちを切り替えて新しいことにチャレンジしようと思い、まずはダヴィンチ・キャンプへの応募を決めました。そこから、自分に何ができるかを考えはじめました。
実はCAのお仕事をする中で、ずっと「もったいないものが多い世の中だな」と思っていたんですよ(笑)。なので、廃棄物にフォーカスしたアップサイクル企画を思いつきました。
はじめは、廃棄食材を利用できないか考えていたんですが、紆余曲折あって、紙のリサイクルに特化したBECS株式会社さんの技術と出会い、古紙を使ったアップサイクル事業として「あっぷるん」実現に至りました。
私は、化学的な知識は全くありませんでした。それどころか、そもそも企画段階でPCすら持っていなくて、当然打ち方も資料の作り方も知らなかったんです(笑)。まず、PCを買って操作を覚えるところからのスタートでした。
これからチャレンジする方には、自信をもってお伝えしたいですね。「私ができたんだから、やればできる!」って。
あらゆる可能性を模索しつつ前進
―本当にゼロからのスタートですね。「あっぷるん」プロジェクトは、いまどのようなフェーズにいるのでしょうか。今後どのような製品の展開を目指しているのか教えてください。
山地さん:「あっぷるん」プロジェクトは、BECS株式会社さんの特許出願も完了し、すでにサンプル販売段階に入っています。
サンプル製品展開は、子ども向けの玩具として飛行機のおもちゃや組立ブロック、全年齢対象に使い捨て歯ブラシ、小物入れの入れ物部分などが完成しています。デビュー戦として、2025年6月の環境月間には商業施設のキッズイベントでの、「あっぷるん」製飛行機のミニ模型を用いた色塗りイベントにて、「あっぷるん」製のおもちゃを初お披露目する予定です。
「あっぷるん」製品は紙由来なので、うっかり口に入っても問題ない点(実証済)、紙製品なので直接文字や絵を描いて遊べる点など、子ども向けにフィットするのではないかと思っています。いずれは、ANAに搭乗されるお子さんに、自分が開発したおもちゃをお渡し出来たらいいなという夢を持っています。
おもちゃ以外で今注目しているのは、野外に廃棄されて環境問題になることの多いもの、例えばゴルフやアウトドアなどのアイテムですね。使用後は古紙回収に出してリサイクル可能、万が一野外に放置されても土に還る点など、紙製品の利点を活かせるのではないかと思っています。
「あっぷるん」は、まだこの世にない“プラスチックのように柔軟に成型できる紙素材”。ユーザー層を限定せず、あらゆる可能性を視野に製品開発を進めている段階です。プロジェクト関連でお会いするお客様は、皆さん開発魂を刺激されるらしく、本当にたくさん頭を悩ませてアイディアを出してくださるんですよ。そういったご意見も参考にさせていただきながら、今後もなんとか前進していく予定です。
―山地さん、お忙しいなか貴重なお話しをありがとうございました。
会社がはぐくんだチャレンジ精神が、まだ世にない新しい素材を生み出し、大きな社会問題の一策として羽ばたいていくストーリーには、伺っていて心打たれるものがありました。
今後も『未来創造室』を通して、さまざまな事業の芽が生まれ、世の中に変化をもたらしていく姿を楽しみに拝見させていただきます。
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